「まぁ、待てっ!!」
紙洲は威嚇するような口ぶりで、闘兵衛の背中に声をぶつける。
闘兵衛は肩越しに、半分不機嫌、半分見下すように冷淡な眼で紙洲を睨みつけていた。
「この街の情報なら、なんでも知っていると言ったろ?」
紙洲は十手を抜き取り、ソレを片手で遊ばせながら、冷静に語り続ける。
「奴らの居場所は、把握している」
表情を崩すように、少し呆れた顔になり、紙洲は言葉を続けた。
「役人には、伝えたんだが……、期待できそうもない」
闘兵衛の表情が、険しくなっていく。
紙洲は十手を肩に担ぎ、さらに続けた。
「だがナ……、この街での悪事は、俺が許さん」
その紙洲の言葉に桃太郎は目を閉じ、軽く笑みを浮かべる。
桃太郎の反応を確認した紙洲は、闘兵衛に話し掛けた。
「今から、桃太郎さんと鬼退治って訳だ……」
「俺も、同行させてもらうゼ?」
紙洲の言葉に間髪入れずに、闘兵衛は口を挟む。
「……言うと、思った」
紙洲は立ち上がり、歩を進めて闘兵衛の脇を通り過ぎながら、呟いた。
(……鬼鴉に、どんな拘わりがあるのかは知らんが、この男から聞き出す必要性は、まだまだ有りそうか……)
一瞬の内に思考を巡らせた紙洲は、答えを導き出す。
