闘兵衛らの思いとは裏腹に、敵兵は姿を現さずにいる。


最初に感じた通り、人の気配すらなかった。


それもそのはず、鬼鴉に兵士はいない。

だが、闘兵衛らにその内容は伝わっていなかった為、彼らの行動はとんだ無駄骨になっていた。


周囲を警戒しながら進む闘兵衛達だが、存在しない敵に身構える姿は非常に滑稽でもある。


恐怖ほど、人間を縛り、抑制するモノは無い。


疑心暗鬼―


しかし、ソレに気付くまでには、さほどの時間は必要ではない。


闘兵衛はいもしない敵兵より、明らかに存在を感じる黒鬼に、焦点を定めているのだった。