「……君は?」
鬼面の男、鬼人と呼ばれた男は特に慌てる訳でもなく、その女性に問い掛ける。
不気味な鬼面に似合わない、低く、良く通る凛々しい声であった。
「私は緒方様の代理で、皐月と申します」
皐月は軽く会釈をしながら、鬼人に向き直る。
「……緒方様からの伝言です。この国には既に侍は無し、御期待に応えられず申し訳ありません。……との、事です」
沈黙を守り、静かに佇む鬼人に皐月はさらに続けて、口を開く。
「……鬼鴉が人々に害を及ぼすようなら、全て滅ぼせ。……と、緒方様より聞いております」
皐月は右腕を胸に当て、深々と頭を下げた。