中肉中背、腰ほどまである外套を羽織り、武器も持たず身軽な恰好で静かに佇んでいる。 少し伸ばした黒髪を後頭部で結い、外見だけでいえば、普通の青年にしか見えない。 しかし、目つきが非常に悪い。 獣、狼のような眼つきであった。 だが、餓狼では無い。 例えるなら、鞘に納められた太刀― 妖刀さながらでもあった闘兵衛の気性も、今は抑えられていた。 桃華との再会は、闘兵衛の狂気を中和させ、しかも、人間としての器を大きくさせている。 今の闘兵衛は、見る者を魅了する名刀のようでもあった。