鬼 鴉 ~壱~ 江戸、中期 ――九州山奥―― 鬱蒼とした山林の中に、その家はあった。 辺りに漂う、深緑の匂いと鮮血の臭い。 室内には、血まみれになった人間の死体が二つ。 青年は己の胃液の逆流を口元で押さえ込み、壁に描かれた印を睨み据えるのであった。