「アズ」
御柳には聞こえないような小さな声で麟紅はアズラクに話しかけた。チラリと視線を向けるとアズラクは目で返した。
「倒す倒さねぇの前に生きる死ぬ問題が重要だと俺は思うんだよな」
アズラクは無言で首肯する。あまりはっきり口には出したくなかったが、この女、“月(ザ・ムーン)”こと御柳が強いことは紛れもない事実だった。
「僕のエジプト魔術は守り専門だしね」
情けない声でアズラクは呟いた。麟紅はため息を漏らしてしまったが、予知眼しか持たず、帝の竜に頼るには気が引けた今の状況ではそれに頼るしかないと理解できた。
「路地裏は狭いしもう暗い。危険が多いこんなとこより一度人通りの多い通りに逃げ込むぞ」
狭い場所では避けることの出来る範囲も狭い。時刻ももうとっくに夕刻を過ぎ、あたりも暗くなってきている。通りまで行くことが出来れば、広いし明るいし、何より人ごみの中に紛れ込めば上手く撒けるかもしれない。
「でも、通りで一般の人を襲わないとも限らないよ」
それも正論。だが、
「この学園に魔法使いの学園長と他に大勢の魔法使いがいることぐらい奴も知ってんだろ。なら下手に暴れて学園内の魔法使い呼び集めるより確実に仕留めようとするはずだ」
手首でこめかみの汗をぬぐった。
御柳には聞こえないような小さな声で麟紅はアズラクに話しかけた。チラリと視線を向けるとアズラクは目で返した。
「倒す倒さねぇの前に生きる死ぬ問題が重要だと俺は思うんだよな」
アズラクは無言で首肯する。あまりはっきり口には出したくなかったが、この女、“月(ザ・ムーン)”こと御柳が強いことは紛れもない事実だった。
「僕のエジプト魔術は守り専門だしね」
情けない声でアズラクは呟いた。麟紅はため息を漏らしてしまったが、予知眼しか持たず、帝の竜に頼るには気が引けた今の状況ではそれに頼るしかないと理解できた。
「路地裏は狭いしもう暗い。危険が多いこんなとこより一度人通りの多い通りに逃げ込むぞ」
狭い場所では避けることの出来る範囲も狭い。時刻ももうとっくに夕刻を過ぎ、あたりも暗くなってきている。通りまで行くことが出来れば、広いし明るいし、何より人ごみの中に紛れ込めば上手く撒けるかもしれない。
「でも、通りで一般の人を襲わないとも限らないよ」
それも正論。だが、
「この学園に魔法使いの学園長と他に大勢の魔法使いがいることぐらい奴も知ってんだろ。なら下手に暴れて学園内の魔法使い呼び集めるより確実に仕留めようとするはずだ」
手首でこめかみの汗をぬぐった。

