逆光でその顔は見えないが、ただその男の象徴とも取れる真っ赤な髪だけが、背後から差し込む光にその色を鮮やかに映し出していた。

「これはこれは、何の用ですか? “戦車(チャリオッツ)”……」

「そんな憤慨すんなよ。なにもオメェを笑いに来たわけじゃねぇんだ」

 “戦車”と呼ばれた男は、手をコートに入れたまま煽烙に近づいてきた。

「“恋人(ラヴァーズ)”に聞いたぜ? やられたってな」

 歩きながら、“戦車”は尋ねてきた。が、煽烙は一切動じず、手に取った二つの試験管を見比べていた。

「それともう一つ面白い情報を聞いたぜ? ……竜王術、だってな」

 ピクリ、と煽烙の眉が動いた。“戦車”は構わず話を続ける。

「竜王術……それと獄竜眼……こんだけ凄ぇもんが揃えば、オメェが負けんのも無理ないな」

 表情を変えないまま、ゆっくりと煽烙は“戦車”を睨みつけた。その表情が、どんどん冷たくなっていく。