素直になんかなれない



――フラれた。


…あぁ、そっか。
あたし、昴をフッたんだ。




わかりきってた事を
ぼんやりとした頭の中で繰り返す。



そんなあたしを知ってか知らずか、悠くんは態度ひとつ変えず

「俺、二人は別れないと思ってたんだけど。」

なんて、当たり前のように言った。




あたしは何も返す言葉が見つからなくて、曖昧な笑顔で前髪を掻いてみる。

その時、ちょうど窓を叩いた雨に悠くんはプリントをあたしの手から引っこ抜き、歩きながら尋ねて来た。


あたしも慌てて悠くんを追い掛ける。



「…昴の事、嫌いになった?」

「え……?」

「俺からしたら、奈雲はまだアイツが好きなんじゃないかって思ってさ。」


違う?と振り返った悠くんに、あたしは更に返事に困った。




…嫌いになれる訳、ない。

むしろ、嫌いになれたら
この心はどんなに楽になるんだろう。


思い出だけを胸に笑えるなら、あたしは今、こんな寂しさを感じてなんかいないはずだもん。

隣に居ない横顔を
探したりなんか、しないはず。