素直になんかなれない



人のまばらな職員室へと続く廊下。

その廊下から見える四角い空を溜め息混じりで見上げた。



「…雨、降りそう…。」

ポツリ、と呟き
無意識に思い浮かべるのは、もちろん昴の事。



毎回プリントもノートも
提出期限を守らなかった昴。


もしかして、直接渡しに来るかなぁ…なんて思ったけれど

そんな期待も虚しく
昴のプリントはいつも彼と居る笹川くんから、人づてに渡された。



わかっていたはずなのに
落ち込むあたしって、本当どうしようもない。

今更何を悔やんでも
時間を巻き戻せるはずもなければ、昴の心があたしに戻る事もないんだから。



わかってるのに
この心はいつもどこか期待してる。



もしかしたら、なんて
本当、救いようのないあたし。




「……本当、バカみたい…、」

ははっと笑って前髪に触れる。


涙がこぼれそうで
だけど、泣きたくなくて。

はぁ、っと大きく息を吸い込み気を取り直すと窓から視線を外し、再び歩き出した。




と、その時。



「一枚落ちたよ。」

ふいに届いた声に、あたしの足が止まった。