素直になんかなれない



「嘘でしょ…?」


廊下から聞こえる笑い声。
教室に響く、朝の挨拶。

何も変わらない、日常風景。



だけど、あたしの話を聞いたヨッシーは
そんな爽やかな朝の光景に似合わず、眉間にシワを寄せたまま口を開いた。


「朝から冗談やめてよー!別れた、だなんて、」

「冗談じゃないってば。」


あたしは一言切り返し
カバンから必要なモノを机に突っ込んでゆく。


その様子を、ただ黙って見ていたヨッシーは
まるで抜け殻のような声で、小さく呟いた。



「…何で、」

「…………。」

「寧々は、それで…本当にいいの?」


ヨッシーの言葉に
一瞬だけ動きを止めたあたしは

すぐに笑顔を貼り付けて答える。




「…いいも何も、こうするしかなかったんだよ。」


そう言ったあたしに
ヨッシーはそれ以上何も言わなかった。

と、言うよりも
何も言えなかったんだろう。



いずれ、あたしと昴はこうなる運命だったのだから。


それを意地になって繋ぎ止めたって
余計、苦しくなるだけ。


潔く手放した方が、傷は浅くて済む。




だから、あたしは間違ってなんかない。


そう、必死に言い聞かせた。