素直になんかなれない



その日の夜。

あんなに鳴りっぱなしだったはずの携帯は
一度も鳴る事はなかった。




すれ違ってばっかりだったあたしたちが
唯一繋がっていられた、電波という細い糸。

それを切ったのは、このあたし自身で。



たった、2日。


それだけしか時間は経ってないはずなのに
あたしを取り巻く全てが、色を失くしてしまった。



何を間違えてしまったんだろう。

どこから、歯車は狂ってしまったの?



傍に居られれば
それだけで、幸せだったはずじゃない。

昴があたしの名前を呼んでくれるだけで
この胸は、満たされていたはずでしょ?



なのに、どうして――――?






泣く事は慣れている、と思ってた。

昴の事で泣く事は
今までだって何度もあったから。


だけど、今は違う。

今、あたしは
昴の彼女じゃない。



その事実が、今まで流したたくさんの涙よりも重たくて。



目覚めたら
夢であって欲しい、と無意味に願ってみたけれど

次の日、鏡に映る自分の姿が
そんな僅かな希望さえ、打ち砕いてくれた。