結局、俺はカラオケ大会中
ずっと歌う事もなく、はしゃぐアキラたちに相槌を打ちながら

悠と二人、ほとんど喋らず最後まで過ごした。



思うのは、寧々の事ばかりで。


せっかくのアキラの誕生日だし
気を取り直して輪に混ざろうとしても

どうしてか、寧々の涙が過ぎってどうしても盛り上がりきれなかったのだ。



アキラたちも、俺と寧々がどうゆう状況なのか知っていたから
無理に輪に入れようとはしなかった。

そんなみんなの気持ちが、とてつもなく有難い反面
申し訳なく思った。


いつも俺に元気をくれる仲間。

くだらない事でも、大した事ない話でも
コイツらなら全部笑い話にしてくれる。


俺にとっては、誰一人欠かせない存在なのだ。



寧々の事だって、心から祝福してくれたし
その為にも、俺は早く寧々と仲直りしたい、と思ってる。


…でも、この事を寧々は理解してくれるだろうか?



そう思うと、どうしても連絡出来なくて
俺は溜め息に塗り重ねられた帰り道を、肩を落としたまま帰宅した。




「…ただいま、」

「あ、お帰りー。」


リビングに入ると、まず顔を覗かせたのは母ちゃん。


年がいもなくフリル満載のエプロンが、パタパタと俺の前を過ぎてゆく。


ちなみに、そのフリルは
家のいたる所に散りばめられていて。

居心地が悪いったらありゃしない。


ここは宮殿かっつーの。