「美帆………、」
振り返ると、そこには
腕を組み、対角線上に立っている美帆の姿があった。
あたしは慌てて濡れた涙を制服の袖で拭う。
だけど美帆は気が付いていたみたいだ。
ふん、と鼻で笑って
バカにするように美帆が口を開く。
「こんな所で泣くとか、悲劇のヒロインってやつぅー?」
とことん、嫌気がさす程のアニメ声で。
「………、」
でも、言い返す気力すらなかった。
とにかく疲れていて
早く、帰りたくて。
あたしは美帆に背を向けて無言のまま歩き出す。
けれど、進み始めた歩幅は
美帆の一言により、再び止まってしまった。
「アキラに負けるとか、超だっさいよね~。」
それは、今のあたしには聞きたくなかった言葉。
ぐっと拳を握り締めるものの
何も言えなくて。
あたしはただ、悔しさに
湧き上がる怒りを噛み殺した。
だって
美帆が言った事は
紛れもない事実なのだから。

