――いつからだったっけ。

寧々が
好きだと気付いたのは。




「相澤くん、」


少し高い声に誘われるように振り返れば

そこにはちょうど眉の辺りで揃えられた前髪に、おだんご頭をしてる女の子が居て。


いつものように悠たちと廊下でバカ話してた俺は、その輪から外れて彼女に走り寄った。



「奈雲、どーしたの?」

「あの…古典のプリント、出してないの相澤くんだけなんだけど、」

「あーっ、そういえば忘れてた!」


ごめん、と両手を合わせて謝る俺に彼女は少しだけ笑って

「じゃあ、放課後に出してくれる?帰りに職員室行くから。」

それだけ告げると
すぐさま友達の輪に溶け込んでいった。




ほぼすっぴんに近いメイクに、ほんのりとピンクに染まった頬。

おだんごにした頭は
女の子らしいゴムで留められていて。


性格は明るくて、オシャレが好きで、だけど俺から見たら、真面目な子だな、ってイメージが強かったと思う。

大して目立つ訳でもなければ
変に着飾ったりもしない、至って普通の女の子。

…それが寧々だった。