その顔があまりに真剣だったから
俺はぶっきらぼうに視線を逸らして言い返す。



「悠だって吸ってるじゃねーか。」

「俺はいいんだよ。中学ん時から吸ってるし。」

「そっちの方がダメだろ。」

「まーな。」

そう言った側から、タバコを口にくわえる悠。



次の瞬間、ライターが鳴って
ジリジリと燃えてゆくタバコの先端が、悠の顔を少しだけ大人にさせた。


そして一気に吸い込んだ悠は

「てかよ、」

話しを切り出し、ふうっと煙を口から浮かばせる。



「フラれたからって、非行に走るとかありがちすぎんだって。」

「…フラれたとか言うな。」

「いや、お前が言ったんじゃん。」


その言葉に、俺は口をつぐんだ。





寧々にフラれた、あの日。


俺はしばらくその場から動けなくて。


というよりも
これは夢だ、と何度も言い聞かせ

現実を見ないようにしてたんだと思う。


それからどうやって帰ったのかは
情けないけれど、正直覚えてない。


だけど、帰り道の途中で悠にバッタリ会って。


『お前、こんな時間に何してんの?』

バイクにまたがり、そう尋ねてきた悠に
俺はモヤのかかった頭で答えた。





『俺、寧々に…フラれちった。』