突然の挙手に目を丸くした。
声がした方向へ目を向けるとまっすぐに手を挙げている生徒が見える。
一番後ろの、廊下側から三番目の席。
間違いなく、彼だった。
「…あ、はい。桐谷君」
全身の力が抜けていくのが分かる。
「せめて、こんなに私が恋い慕っているとだけでも
あなたに言いたいのですが、言うことができません。
伊吹山のさしも草ではないが、それほどまでとは
ご存じないでしょう。火のように燃え上がる私の思いを」
…助けてくれた?
ゆっくりと、丁寧に詠む彼の口調は
アタシをビクビクさせる。
真剣な瞳でアタシを見る千昭。
ねえ…?
なんで?
なんで、今日は助けてくれるの?

