「大切よ。リッカはこれからもっともっと昇りつめて、稀代の歌姫になる予定なんだから」

ヨシダは、そう言って、前方を見つめたまま口元に笑みを刻むと大きく頷いた。

「そんなに、上手いのか?」

「あれ? 聴いたことないの?」

「ああ。まだ一度も」

「聴く?」

ヨシダが車についたオーディオに手をかけると、ジンが「いや」と首を横に振った。

「止しておく。そのうちリッカに聴かせてもらう」

「そぅ。……それがいいわね」

ジンの言葉にヨシダが頷いた。