俺は千穂の目の前の
グラスにビールを注いだ

『ありがとう』

さっきまでの動揺を
落ち着かせた千穂が
真っ直ぐ俺の目を見る

2人で過ごす、いつもと何も変わらない食卓

目の前には千穂が居て
俺を見ていてくれている

俺も千穂を見つめている

全く普段と変わらない

千穂の左手の薬指には
俺が渡した婚約指輪が
キラキラと輝いている

一瞬その指輪を見てから俺はさっきの続きを
話し始めていた

『入籍の日だけどさ』

『うん』

今度はちゃんと話す

『俺のわがままを
聞いて欲しいんだけど』

『わがまま?』

『うん。俺たちの大事な結婚記念日になる日は
どうしても…どうしても




千穂の誕生日にしたい』

『大介…』

『その日が千穂にとって喜びが2倍になって
千穂の幸せも2倍に
なってほしいんだ。
特別なのが2つ一気に
訪れてくれるような日になってほしいから。
千穂の幸せの為になら
俺はちゃんと努力する
…ダメかな?』

俺は千穂を見つめて
千穂の返事を待っていた

千穂は指輪に目をやってゆっくり微笑んだ

『嬉しい。大介のその
気持ちが本当に嬉しい。毎年毎年、素敵な2つの記念日にしてねっ』

微笑みながら千穂は言う

それからグラスを合わせビールで乾杯をした