無理に忘れようと
すればするほど、簡単に忘れられないはずだ

その事だけを考えて
しまうんだから

タバコを変えないのが
その証拠だった

眠る時も北川さんの事を考えているからこそ
夢にさえ出てこないって言えるんじゃないか

千穂の傍から北川さんが居なくなったけれど
千穂の心の中には
北川さんが居続けた

俺にはわかっていた

俺は千穂を愛してる

だからこそ、千穂には
無理やり忘れる事を
強制したりはしない

千穂がどれだけの愛を
北川さんに捧げていて
どれだけ愛してたのかを俺は知っているから

今の俺にはそれしか
出来なかったんだ

だから千穂を求める事も出来ないままだった

好きだよ…

愛してるよ…

そんな感情は今の
千穂には向けられない

時間がかかっても
幸せにするのは俺だと
思っていたからだった

今はとにかく千穂を
支えていく事だけが
俺の役目だった

千穂と会う機会は
どんどん増えていった

ご飯を食べに行ったり
酒を飲みに行ったり

もちろん喧嘩もした

些細な事だった

それでもそれが、普段の千穂に戻ってきて
くれているサインだった

喧嘩をしているのに
俺は嬉しかった

膨れっ面をしている
千穂の横で微笑んでいた