泣いている千穂に
北川さんとの事を
少しずつ話していた

病室に呼ばれて、そこで色んな事を話した事を
なるべく正確に千穂に
伝えようと思った

北川さんの本音が
たくさん溢れていた

思い出すかのように
ゆっくり話していて
北川さんの気持ちも
全てを千穂に話した

千穂の涙はとめどなく
零れ落ちていた

北川さんがゆっくりと
千穂と一緒に居られて
幸せだったと言った事を話ながら思い出して
俺は鼻の奥にツンと
感情が湧き上がってきた

涙が零れ落ちないように天井を見上げていた

それなのに感情の方が
自分の行動より強かった

溢れる涙は頬をつたう

天井を見上げながらも
その天井は涙で歪んだ

なぜだろう

北川さんが居なくなったその状況を俺が誰より
受け入れられてない

それでも北川さんの
千穂を頼むという言葉を思い出して、決意した

俺が千穂を幸せにする

そう出来ればいいんだ

俺は千穂を見て
涙を拭って言った

『あの人が
出来なかった分、
俺が千穂を世界で一番
幸せな女にしてやる』

千穂の目を真剣に
真っ直ぐ見ながら言った

それでも千穂の口からは何の答えも出なかった

それはわかっていた

何の答えもない事は
わかっている事だった

『時間かかっても
大丈夫だから。
俺はちゃんと千穂の
傍にいるから』

千穂を安心させる為に
その言葉を捧げた