初恋~俺が幸せにしてみせる~

俺の服からゆっくりと
手を離して、ただ涙を
流しているだけの千穂を優しく包むように
そっと抱きしめた

千穂は震えていて
強く抱きしめてしまうと砕けていきそうだった

千穂の心の奥にまで
突き刺さったはずの
衝撃的な事実は、今は
俺がこの体で吸収して
やる事しか出来ない

俺の腕の中で泣く千穂は俺に助けを求めていた

俺は何もしてやれない

医者なのに、人の命を
救う事が出来ないなんて

『何もしてやれなくて
ごめんな』

俺の言葉に、千穂は
何の反応も示さなかった

『北川さんの担当医は
俺なんだ。院長からの
指名だったんだけど
これも何かの運命って
やつなのかもしれない』

それでも千穂は何も
言わないままだった

俺は千穂を抱きしめた
その手をゆっくり離した

何もしてやれない、そのもどかしさと苦しさで
俯く事しか出来なかった

千穂をリビングの
ソファーに座らせて
俺はコーヒーをいれた

少し甘めのカフェオレに近いような感じの
コーヒーを千穂に
差し出した

千穂はゆっくりと
カップに口をつけた