初恋~俺が幸せにしてみせる~

『あの人はもう長くないかもしれない。
癌が転移してる。
若いから、進行も
早くなってる』

上手く説明しようと
すればするほどに
上手くいかなくて
どう話していいのか
自分でもわからなかった

ただ北川さんが癌で
先が長くないという
事だけしかまとまらない

その時、千穂が持ってたグラスを落として
グラスは床で粉々に
砕け散った

千穂が冷静さを失った
合図のようだった

『大丈夫か、千穂』

千穂の傍に駆け寄ると
小刻みに震えていた

とりあえず、足元の
ガラスの破片を片付けた

千穂の心もきっと
このグラスのように
壊れてしまったはずだ

呆然と立ち尽くし
小刻みに体を震わせて
瞳に涙を溜めながら
俺の言葉を頭の中で
整理しようとしても
出来ないような状態に
なってしまっていた

『千穂、しっかりしろ』

俺は力の抜けた千穂の
体を揺さぶっていた

立っている事さえも
ようやくのようだった

千穂の目を見ても
焦点が合っていない

このまま倒れて
しまうんじゃないかと
思ってしまうほどだった