歩きながら、色んな事を考えて、思い出していた

酔いもすっかり冷めて
いたのだがタクシーが見つかるまで、俺は
ゆっくり歩く事にした

千穂の過去を振り返り
自分を恨んだ

どうして千穂を守って
やれなかったんだろう

騙されて、金なんて
使ってる場合じゃ
なかったんだ、俺は

千穂は苦しんでいた

千穂は泣いていた

千穂は頑張っていた

千穂は…

考えるほど、自分の
不甲斐なさが浮き彫りになってきてしまう

離れられない愛って
どんなものだろう

俺には想像がつかない

子供が出来るって
どんなものだろう

それも想像がつかない

俺の知らない世界が
そこには広がっていた

だけど、今は俺が千穂を救ってやるんだって
思えていたんだ

ありきたりの幸せしか
味わわせる事しか
俺には出来ないとしても

辛い思いだけはさせない

泣かせたりなんかしない

愛しい千穂を
手放したくない

離したくない

通り過ぎる車のライトがやけに眩しい夜

俺は何年かぶりの
幸せな夜を迎えた