愛おしくて触れたくて
千穂の頭をなでた

サラサラの髪が
俺の鼻をかすめる

『辛かったな。
色々聞いたよ』

そう言っても千穂は
顔も上げなかった

だけど、ギュッと俺に
しがみつくように
強く抱きついていた

辛かったよな

我慢してたんだよな

それを受け止めるのが
俺の役目であれば
それで構わないよ

俺はこうして千穂が
ここに居て、俺との
再会を喜んでくれてる
だけで充分だよ

俺の方が救われる

千穂のぬくもりだけで
救われていくのがわかる

俺の体から離れた千穂が

『何で大介がここに?』

と不思議そうな顔で
尋ねて、俺の全身を見てネームプレートで
視線を止めた

『ここの医師だから』

簡潔にそう答えた

あまり威張るように
言わないように
気を遣いながら

そっと千穂の表情を
伺いながら

千穂の顔には笑顔が
戻っていた

少し瞳を潤ませて

俺に微笑みかけていた