当直の晩

トイレに行くフリをしてダッシュで産婦人科の
病棟へと向かった

後で気付いたけど
調べれば簡単だった

だけど余裕を持てない

そんな俺が行動させた

急いで病室の名前を
見ていく

下の名前が千穂の
名前になっている
プレートを探す

“山下千穂”

見つけた名前は
全く変わっていない

名字は昔のままだった

一番奥の個室だった

少し普通よりも
高い部屋だった

部屋からは少しの
灯りがこぼれていた

眠れないのか?

寂しいのか?

そんな思いばかりが
浮かんでは消える

俺は静かにそこを
立ち去っていた

ナースセンターに
顔を出しに行った

看護士達がコソコソと
笑いながら話をしていた

俺が咳払いをすると
ハッとして仕事を
始めていた

『いいよ、緊張なんて』

苦笑いをしながら
看護士達は俺を見つめた

『何の話?』

俺は笑顔で問いかけた

すると1人の看護士が
にやけながら、俺に
近付いてきた

『階段での事件です』

頭の中はクエスチョンだ

『どんな事件?』

その看護士は
声を小さくして
話してくれた