ここまできても、俺は
麻美を愛していた

なぜだろう

騙されたという
確信がなかったから

直接麻美に会って
話さなきゃ、前には
進めないような気がした

だけどもう俺には
探す術はなかった

急に暗闇に、俺だけ
取り残されたような
気分だった

警察に相談するべきか

職場の先輩に相談してもきっと警察に行けと
言われるだけだろう

俺はそれでいいのか

それが麻美の為に
なるんだろうか

部屋で缶ビールを片手に悩み続けた

タバコに火をつけて
揺れる煙を見ていると
千穂の顔が浮かんできた

千穂、俺はどうしたら
いいんだろうか

助けてくれよ

俺を救ってくれよ

千穂は助けになんて
来てくれるはずはない

わかっていたけど
現実逃避したかった

逃げたかった

明日は夕方からの
出勤で当直だった

それでもあいつらは
俺が現れるのを
待っているのだろうか

逃げたと勘違いして
しまうんじゃないか

本当は逃げたくて
たまらない

だけど、どこまでも
追われるような
気がしていた

きっと地の果てまでも

俺が死んで、俺の死体を確認するまでは
納得しないやつらだと
俺は思う

逃げ道なんて
残されていないんだ