コーヒーを飲み込む
‘ゴクリ’
という音が響く

男が吐き出す煙が
俺を包んでいた

頭の中を整理しようと
色々考えてみる

麻美が逃げた?

俺に何も言わずに?

借金は?

この男達は
俺に借金を返せと
言いにきたのか?

そんなの無理だろ

麻美を愛してる

でも、どうして?

俺を愛していた
はずじゃなかったのか?

疑問ばかりが浮かぶ

俺に何を求めたんだ?

俺は何をすれば
いいんだ?

もう何も言えない

この場で叫びながら
逃げてやろうかと
思ってしまう

そんな勇気もないくせに

先に立ち上がったのは
俺じゃなかった

『ちゃんと返すまで
どこまでも
追いかけてやるから
逃げても無駄だぞ』

少しドスの効いた声で
低く言って
携帯の番号を書いた紙と千円札を1枚置いて
男達は店を出て行った

しばらく俺は
放心状態だった

何も考えられず
立ち上がる事さえ
出来ないでいた

何の音も耳に入らない

頭の中は真っ白だった

辛いとか悲しいとか
そんな感情さえも
湧いてこない

男が最後に言った言葉が俺を無力にさせた

麻美の裏切りも
今は考えたくない