未来を信じていた俺は
すでに29歳になっていた

未来なんて馬鹿げた話
だったのかもしれない

これまでスムーズに
医師への階段を
駆け上ってきた

人の死を受け入れて
ここまでやってきた

まだまだ勉強しなきゃ
いけない事は沢山ある

麻美との将来の為に
頑張るんだなんて
綺麗事だった

毎日の生活だけ
精一杯だった

色んな事が山積みに
なってのしかかってくる

全部を自分だけで
支えなきゃいけない
プレッシャーも
大きかった

心配して電話を
してくる母親

元気にしてると
明るくしてみせる

俺の状況なんて
わかってもいない母親

本当はどこへ進むのか
自分でもわからないで
いるはずなのに

なぁ、ばあちゃん

もしばあちゃんが
生きていたら
俺は医者になるなんて
言い出さなかったかな

普通のサラリーマンに
なっていたのかな

ばあちゃんが
生きていても
医者を目指して
同じ道を進んで
いたのかな

時々ばあちゃんを
思い出す

俺にはわからないよ

これからどこへ
向かえばいいのか

ばあちゃん…
教えてくれよ

俺は間違ってるのか?