起き上がって
コーヒーを入れた

麻美は何も言わない

だけど、珍しく
キッチンに立つ俺の
後ろから、そっと
抱きついてきた

そして俺の背中に
ピトッと頬を付けた

『どうした?朝から
また抱いて欲しい?』

俺の冗談に、麻美は
クスクスと笑った

違うよな

わかってる

抱いて欲しいわけじゃ
ないって事くらい
俺にもわかるよ

でもこんな冗談で
和ませるくらいしか
俺にはしてやれない

麻美をちゃんと
守ってやる事が出来ない

守るって事が
お金を出してやる事
だなんて思わないから

麻美の為にならない

借金の理由が
どんな理由なのか
俺には知らないけど

そこまで詳しく
聞くつもりもないから

どうしてあげれば
麻美が喜んで
くれるのか

俺にはわからなかった
だけかもしれない