店を出て、花を1本
みつめながら歩いた

何を考えるわけでなく

何を思うわけでなく

家までの道のりを
ゆっくり歩いていた

家に着いて、花瓶に
花を刺して手を合わせた

天国へ旅立った
患者の顔や遺族の顔が
次々と脳裏に
浮かんでは消える

ゆっくり休むんだよ…

もう苦しくはないから…

何度か花屋に足を運んだ

それだけ俺の目の前で
人の命が消えていった

涙を流して、ベッドの
横で泣き崩れる人を
何人も見た

何もしてあげられなくて悔しさが込み上げる

その繰り返し

医者を目指した事を
後悔する瞬間だった

それでも日々を
こなしていく