毎日千穂を思い出す
わけじゃない

ふとした瞬間だけ

街を歩いていて
若い女がタバコを吸う
その仕草を見て
千穂を重ねる

千穂と同じ香水の
匂いがしたら、千穂を
探してしまう

そして、千穂と行った
雑貨屋の前を通る時

でも今その雑貨屋は
なくなってしまった

別の店に変わっている

もう忘れろと
言わんばかりに…

毎日千穂の事を
考えていたのは数年前

どんどん俺たちは
年を取っていく

自分で生活する事に
責任を持つようになる

見守ってくれる
教師ももう居ない

大学教授の講義に
頭を集中させていた
あの頃も、もうない

医者として駆け出した
俺の生活に余裕が
なくなってきていた