【長編】Sweet Dentist

俺が次の言葉を選んでいると、小さく溜息を付いて千茉莉が口を開いた。

「友達だったの宙は。ずっと…いい友達だったのに。でもあたし告白されて…」

「今まで何も気付かなかったのか?」

「わからない。宙は今までアプローチしてきたって言うけどあたしは全然気づかなくて。でも、好きって言われても宙はずっと友達だったから、いきなり告白されてもあたし、受け入れられなくて」

「付き合うって言ったのか?」

「言葉では何も。ただ…」

「それでキスされても抵抗しなかったんだな。相手は本気だって知っていたんだろう?期待させるだけ残酷じゃないのか?」

「…うん。わかってる。あたし酷い事をしているって…。でも…宙はそれでも良いって言ってくれたの。あたしが宙を好きになるまで待っているって」

「おまえなぁ。キスしてあんなに悲しそうな顔して泣くくらいなら何で好きでもない奴とキスなんてしたんだよ」

千茉莉の頬を涙が伝っていった。

苦しげに思いを吐き出す千茉莉を抱きしめたい衝動を抑えきれなくなり、その肩を抱き寄せた。

「泣くなよ。千茉莉の泣き顔は好きじゃない。おまえは笑っているか怒っているほうがかわいいよ」



…おまえの本当のファーストキスの相手は俺だって知ったら




おまえはどうするんだろう。