【長編】Sweet Dentist

俺は小さく息を継いでから奴を舐めるように見て冷たく言った。

「千茉莉は俺が連れて行く、悪く思うな」

「千茉莉!おまえそいつと行くのかよ。俺と付き合うつもりでキスしたんじゃなかったのか?」

先日のキスシーンが胸を過ぎって更に不快感がせり上がって来る。

こいつにだけは譲りたくないと俺の中の何かが牙をむいた。

「千茉莉がおまえの彼女だったら許可がないと誰とも出かけられないのか?おまえが千茉莉を束縛する権利を持っているって言うのか?」

俺の言葉に悔しそうに言葉を詰まらせる奴に、追い討ちをかけるようにたたみ掛ける。

「千茉莉はおまえに恋しているわけじゃない。キスしたくらいで千茉莉の気持ちを無視して自分の彼女だなんて簡単に言うんじゃねぇよ」

そう言って千茉莉を引き寄せるとこの間と同じように唇触れないギリギリのところにキスを落とす。

多分奴から見れば俺達がキスしたように見えただろう。

千茉莉が怒り出すかとも思ったが、意外にも真っ赤になって俯いただけだったので気を良くしてそのまま腕の中に閉じ込め、奴の視線から庇うように抱きしめた。