【長編】Sweet Dentist

クスクスと笑いながら、千茉莉をフワリと抱き上げると、そのままベッドルームへと連れて行く。

「あ?きゃっ!ちょっ…響さんっ?」

一瞬表情を硬くした千茉莉に
「何を考えている?」
と耳朶を噛んで囁く。

俺の低音に弱い千茉莉は、真っ赤になって俯いてしまった。

ベッドに下ろすと慌てて腕をすり抜けていく千茉莉。

無理強いするわけではないが、こうあからさまに逃げられると意地悪したくなるのが俺の性格。

両肩を固定するように押さえつけ、覆い被さると、鼻が触れる距離で覗き込みニヤリと一言。

「逃げること無いだろう? 俺達婚約者らしいし?」

「ちょっ…放して。婚約って…別に正式にそんな事してないじゃない」

ちょっと気に入らないその台詞に、ピクと右の眉が上がるのを感じた。

気に入らないときの俺のクセだ。

千茉莉もそれを悟ったらしく、シマッタという顔をしたが、時既に遅し。

「ふーん…。本気だって言っている男の心を弄ぶようなことを言う訳だ。
良く解った。お前の場合は既成事実が先のほうがよさそうだな」