【長編】Sweet Dentist


響さんが感謝の言葉を述べると、アリスさんの頬を涙が伝った。

ほんのりと色を増し薔薇色に輝く頬。

その目じりから細く流れる一筋の真珠。

アリスさんは確かに響さんの言葉に反応した。

きっと奇跡は起こる。

あたしはそんな予感に駆られて、鞄の中から【アムール】で作ってきたクッキーを取り出した。

このクッキーにあたしは彼女から感じ取った沢山の愛情を込めた。

今ならば、彼女の眠りの封印をとくことが出来るかもしれないと思ったのだ。

クッキーを見た響さんは、瞬時にあたしの思いを悟ったようだった。

視線で問いかけると、お父さんは黙って頷きそれを受け取った。

公爵と夫人とアンソニーさんが、不思議な顔をして見守る中、お父さんは包みを開くとクッキーを少し噛み砕き、お母さんに口移しで口に含ませた。

例え飲み込むことは出来なくても、口に含むことでその香りや味は伝わるはず…。

それが奇跡を起こしてくれることを願って

あたし達はアリスさんの変化を見守った。