【長編】Sweet Dentist

父の隣に母が、その隣に俺と千茉莉が座る形で七人全員が円卓を囲んだ頃、時刻は既に11時になろうとしていた。

随分と遅いパーティの始まりは、俺達の到着を待った為だと思っていたが、毎年パーティを始めるのは10時ごろからなのだそうだ。

家族とともに誕生を祝うことを公爵はとても大切にしていて、それはレクシデュール家がかつて、ヨーロッパの小国の王家だった頃から続いているしきたりだと教えてくれた。

誕生日はその人物の生まれた時間を家族で祝うのが王家に伝わる本来の形だったらしく、公爵はそれを今も頑なに守っているのだ。

母が生まれた時間は11時12分。

その時間に皆で祝いの歌を捧げ、一人ずつ祝福のキスを贈る。

今は滅びた王家の血が自分にも流れているという事実には驚いたが、もっと驚いたのは父の献身的なエピソードだった。

俺と母の誕生日が重なる為、母の誕生日に来ることが出来なかった俺の幼少期には、父は毎年電話機越しにパーティに同席し、母の誕生日を祝っていたそうだ。

時差を考えれば日本時間は翌日の午前7時ごろという事だ。それからその日の便で、誕生日を迎えた俺の写真を持って母の元へと飛んでいたのだそうだ。

言われてみれば俺の誕生日の翌日、父は必ず不在だった気がする。

俺の誕生日を祝っていたのは12~3歳くらいまでだったから、約10年ほどそれを繰り返していたということになる。

父の母を思う一途さには、改めて脱帽する思いだった。