【長編】Sweet Dentist

俺はこれまでに思い出した僅かばかりの思い出を、物語を語るように母の耳元で話して聞かせた。

たとえ目覚めなくても、俺が傍にいることを知って欲しい。

もしも夢を見ているのならば、俺達の幸せだった思い出を夢見て欲しい。

この手が俺を抱きしめることは無くても、せめて夢の中で俺を抱きしめて欲しい。

そう願いを込めて母に語りかけた。

パーティの為に僅かに傾斜を付けたベッドに、身体が傾かないよう周囲をクッションで固めて、まるで自分の意志で座っているかのようにテーブルに着く。

その姿に幼い頃、誕生日のケーキにロウソクを灯してくれた母を思い出した。

霞の掛かったおぼろげな記憶の中、仄かなロウソクの明かりの向こうで微笑む母。

3本の炎と格闘する俺を、母の隣で微笑みながら必死にカメラに収める父。

断片的に蘇る思い出に、母を目覚めさせたいと願う心は益々膨れ上がっていった。