【長編】Sweet Dentist

「もうすぐアンソニーがアリスをここに連れて来る。会ってやってくれるか?」

父の声が妙に大きく聞こえた気がした。

緊張から神経が研ぎ澄まされているのか、自分の声さえも、耳にワンワンと響くようで五月蝿かった。

その時、フワリと左腕が温かくなった。

千茉莉が腕を絡め、俺の不安が和らぐように寄り添ってくれていた。

愛おしいと思った。

母が俺を産んだときも、やはりこんな風に愛おしいと思ってくれたのだろうか?

抱きしめて護りたいと思ってくれたのだろうか?

幸せを願ってくれたのだろうか?

愛していると―…

何度も言ってくれたのだろうか…?



「響さん…大丈夫?」

「千茉莉…お前がいてくれれば大丈夫だ」

「うん、傍にいるよ。…勇気を出して」

ギュッと肩を抱くと、顔を上げ父に向かった。

「母さんに会うよ。…いや…会わせて欲しいんだ」


俺の言葉を待っていたかのように、温室のドアが開いた。