【長編】Sweet Dentist


「母さんは、ここに来るのか?」

俺の声は震えていた。

感情が高ぶって、込み上げてくるものを制御できなかった。

幼い頃から何度も母を求めて伸ばしたその手は、いつも空を掴んでいた。

寂しくて涙を流した幼い日も、優しく抱きしめてくれる腕は無かった。

求めても、求めても、母の姿はどこにもない。

そして…俺はいつしか求めることを止めた。
いや…止めたつもりだった。

求めるから失望するのだと気付いたときに、求めるのを止めた。

いや…止めたふりをして自分に忘れたと言い聞かせてきたんだ。

本当はずっと求めてきた。

温かく抱きしめてくれる腕を…


そして…俺は千茉莉に出逢った。


もう母の影を追い求める必要など無くなった…。

それなのに、やはりこんなにも会いたいと思うのは何故だろう。

俺を抱きしめることも、声を掛けることもできない母に…

何故…こんなにも会いたいと思うんだろう。