【長編】Sweet Dentist

訳の解らないまま突っ立っていると、すぐに客間から出てきたママは、あたしに
「シャルルにコーヒーを出してあげてね」
と言い残し、パタパタとお店へ向かって駆け出して行った。

半ば放心状態で言われたとおりにコーヒーを淹れ、客間へと向かう。

ドアを開けたら、さっきのは幻で、シャルルさんは消えている…

…なんて事はもちろんなかった。

「こんばんは。…えっと…お久しぶり?…です」

「こんばんは、千茉莉。どうしてそこで疑問形なの?」

「えーっと…久しぶり…かな?って思って」

自分でもおかしなことを言っていると思う。

だけど、頭の中は疑問符でいっぱいで、何をどう話していいかなんて分からなかった。

「…どうして…ここにいるんですか?」

「呼び出されたんだよ、君のお父さんにね」

「はあっ?」

ちょっとパパ?

シャルルさんを呼び出しって、どういうつもり?

世界でも指折りの天才パティシェのシャルル・セロンよ?

日本の片田舎の洋菓子店まで出向かせるなんてありえないよ!