【長編】Sweet Dentist

いつの間にか小さくなった背中。

細くなった肩。

白いものが混じった髪。

それらに父の苦労した時間の長さを感じ、これまで自分の中でわだかまっていたものが解けていくのを感じた。

「もういいよ、それより…早く引退して母さんの所へ行ってやれよ。
クリニックは俺に任せても良いから」

自分でも驚くほど優しい声だった。

これまで父にこれほど穏やかな気持ちで話したことがあっただろうか?

いつだって、どこか一線を引いて、ギクシャクしていたのに、あの頃がまるで嘘のようだ。

無限の空間に感じられた狭い部屋に、今は穏やかで静かな時間が流れていた。

幼い俺が親子三人で幸せに暮らしていた頃の写真を見て、懐かしい思い出を語る父の表情(かお)は…
俺が初めて見る、穏やかで幸せな笑顔だった。