【長編】Sweet Dentist


あまりの事に俺は思わず息を呑んだ。

父は一旦言葉を切り、次の言葉に備え呼吸を整えるように息を継いだ。

「更に最悪なことに、その時…アリスの前に幼い子供が飛び出してきたんだ。
不自由な手足で必死にバランスを取っていたアリスに、その子を避けることなど出来るはずがなかった。
だが、アリスは勢いの付いた車椅子から大きく身を乗り出して、衝突を避けようとしたんだ。
彼女の身体は勢い良く投げ出され、頭部から石畳に叩きつけられてしまった。
それでも意識を失う直前に
「響は大丈夫だった?」
と訊いたそうだよ。

…その男の子は、

ちょうどアリスと別れた頃のお前と良く似た背格好だったらしい」

声を詰まらせた父の頬を、一筋の涙が伝っていった。