【長編】Sweet Dentist


「天気が良いので公園の売店でスコーンとダージリンティーを買ってお茶にしようとアンソニーが誘うと、彼女は久しぶりに見た満面の笑みで応えたそうだよ。
それがアリスの最後の笑顔だった。アンソニーが売店へ行っている僅かな時間に事故は起こったんだ」

父の声が震えた…。

25年前の出来事であっても、その傷が未だ癒えない父にとって、その出来事を語るのはどれほどの苦悩なのか。

両の拳は膝の上で硬く握り締められ、肩が小刻みに震える姿は、怒りに震えているようにも泣いているようにも見えた。

「アリスの事故はまったく予想外の出来事だった。
公園でサッカーをしていた学生達のボールがぶつかったんだ。
彼女はその衝撃でバランスを崩し、車椅子は制御を失い左右に大きく揺れながら暴走してしまった。
気付いて戻ってきたアンソニーも追いつくことが出来ないほどのスピードだったらしい」