【長編】Sweet Dentist

事故の後、生存者はいないと報道された。

だが父とて、事故の捜査が早々に打ち切られたこと、
遺体の判別が付かない理由から遺骨を引き取ることも出来ず、母の遺品すら見つからなかった事実に納得していた訳ではない。

憤りを感じながら現地入りした父は、ふとしたことから、ある情報を付近住民から耳にした。

全員死亡と報じられているのはおかしい。
救助された女性が地元の病院へ運ばれたはずだというのだ。

彼女が長い金髪の女性だったと聞いた父は、すぐに教えられた病院へと向かい、真偽を確かめた。

残念ながら、それは別の女性だったのだが、父はその時点で何故、生存者の情報が公にならなかったのかを疑問に感じた。

何か深い理由があるのでは、と考えた父は、祖父から受け継いだ財産の全てを投げ打って、独自に捜索を開始したのだ。

もしかしたら、どこかで生きているかもしれない。救いを求めているかもしれない。

そう思ったら、僅かな可能性であっても、賭けてみたかったのだという。