【長編】Sweet Dentist

父に続いて部屋に入ると、ひんやりとした空気が漂っていた。

最近は余り使っていないのか、きちんと整頓された書斎のあちこちに、埃が薄い膜を作っていた。

父はそのまま書斎を横切り奥の納戸を開いた。

そして、そのまま納戸の中に入り込むと、その奥にあったもう一つの小さなドアの鍵を開けた。

納戸の中に更に扉があるなんて、聞いた事が無い。

自分の実家にそんな秘密めいたものがあるなんて、全く知らなかった俺は、「先祖代々の宝でも隠してあるのか?」と、首を伸ばして覗き込んだ。


そこにあったのは―……


俺の記憶に蘇ったばかりの母の笑顔だった。

「…か…あさ…ん?」

部屋いっぱいに溢れる母の笑顔に、俺は暫し呆然と立ちすくんだ。