【長編】Sweet Dentist

響さんの心が記憶を辿り、胸の奥深くへと還っていく様子見ながら、パパは更に話を進めた。

4代続いた老舗の和菓子屋の5代目として育ったパパは、学校給食のゼリーとかプリンくらいしか洋菓子を知らなかったそうだ。

ケーキなんて年に一度、クリスマス給食のショートケーキくらいしか見たことも無かったというのだから、あたしにしたら信じられない。

本当に美味しい洋菓子を知ったパパは、週に2回お邪魔するたびに、お菓子の魅力に益々ハマって、いつしか自分で作りたいと思うようになっていった。

だけど、職人気質のおじいちゃんの手前、恐ろしくて自宅で洋菓子を作るなんて出来なかったらしい。

あたしの中の記憶には、いつだってニコニコ笑っている優しいおじいちゃんしかいない。

だけど、跡継ぎであったパパに対しては、とても厳しい人だったそうだ。

パパが和菓子ではなく、洋菓子の道を歩みたいと言った時には、随分と対立したのだと聞いた事がある。

だからかもしれない…。

あたしがパパと同じ道を歩むことを決めたとき

「千茉莉も洋菓子の道に進むのか。頑張れよ」

と励ましてくれたおじいちゃんは

少し寂しそうに笑ってたっけ。