【長編】Sweet Dentist

心配で響さんの手をキュッと握り締めると、ようやく視線が動いた。

ゆっくりとテーブルの上を移動し、パパを見つめ、最後にあたしの所で止まる。

「この味…覚えているよ。
…幼い頃母親がいつも焼いてくれたクッキーだ」

そういうと瞳を伏せ、少し眉間に皺を寄せたまま、微動だにしなくなった。

何かを深く考えているようで、声を掛けることも憚られる。

やがてゆっくりと顔を上げた響さんの瞳には…

薄っすらと光るものが浮かんでいた。

「響…さん?」

「思い出したよ…ずっと…忘れていた…母さんの顔を」