【長編】Sweet Dentist

まだ怒っているのかと、諦め顔でその背中を見送っていると―…

「今夜は千茉莉の誕生祝いをするから…安原さんも来なさい。
8時だ。遅れないように」

ボソリと小さな声で呟いて、言い終わるや否や、バタンとドアを閉めて行ってしまった。

その時パパが、どんな気持ちだったのか

どんな表情をしていたのか

それを知っていたら

あたしはとても驚いていたと思う。



怒っているわけでもなく…

哀しんでいるわけでもなく…

何かを懐かしむような…

切ないようにも、幸せそうにも見える表情(かお)をしていたことを…

この時のあたしたちは、知る由も無かった。