【長編】Sweet Dentist

会場の空気がざわめき立ち、それまでの緊張とは別の意味で重苦しい空気が流れた。

千茉莉が入賞できなかった事実に、信じられない思いで呆然と立ちすくむ。

ライバルチームの中からも、『何故?』という疑問の声が上がった。

だれもが千茉莉の受賞を確信していただけに、その結果に不信感を抱いたのだろう。

だが、千茉莉は全く気に留めた様子も無く、入賞者にトロフィーが送られるのを、微笑すら浮かべ心からの拍手を送っていた。


特別ゲストとして迎えられていたフランスから来たパティシェが挨拶に立った時も、会場のざわめきは収まらなかった。

千茉莉のアクシデントの際、妙に冷たい目で見ていた男は、有名なパティシェでゲスト審査員だったらしい。

マイクの前に立つとガラス玉のような青い目で、チラリと千茉莉を見る。


不意に、心が波立つものを感じた。