【長編】Sweet Dentist

「千茉莉に実力が無いなんて、そんな事ないぞ。
人にパワーを貰ってばかりなら、あんなに人を幸せな気持ちにさせるウェディングケーキは作れないさ。
お前が誰かの幸せを願う優しい気持ちがあるから、あれだけ人を幸せな気持ちにさせることが出来るんじゃないのか?」

「それは…響先生のおかげだよ。
お付き合いを始めてから、大会の事で悩んでいたあたしをずっと支えてくれたでしょう?
不安だったあたしの気持ちを穏やかにしてくれた。
それにあたしの事を第一に考えてくれて、とても大事にしてくれるのが解るから、とても幸せで…
その気持ちが今日のウェディングケーキに反映されただけだと思う。
それは響先生から貰った幸せのパワーであって、本当のあたしの力じゃないもの」

「だから留学しないって?」

「うん…。でも大会で優勝できたら…きっと少しは自信が持てると思うの。
そしたら…」

響先生はあたしの髪をクシャッといつもの様に撫でて

『そうか』と言うと

それ以上留学の話はしなかった。